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2007年12月 1日 (土)

金田さん、その9



「母の小学校の同級生だった金田さんですね…。
まさか今、ここでお会いするなんて」

麻子は信じられないという風に首を振った。


「なぜ、オレ…、私を知ってるんだい?」


「母がよくあなたと撮った昔の写真を見せてくれたんです。
一番楽しかった子供時代よって…
全然変わってないので分かりました。」

「…」

「母に言わせると小さい頃は転校ばかりで内気な子供だったらしいですね。
だから山や川で遊んだり、同級生とも仲良くなれた群馬にいた時が
一番楽しかったそうです。それもみな、あなたのお陰だとよく言ってました」


荘次の胸の中にはあの時のモノクロの写真と
まだ残っていた少しばかりの後悔が甦ってきた。


驚きで黙っている荘次に麻子は話を続けた。


「実は私が高校生で弟もまだ中学に入ったばかりの時に
父が亡くなったんです。

いつも控えめで父に頼りきってた母でしたが、それからは
私達にちゃんとした教育を受けさせる為に
外に出ていってがむしゃらに働いてくれたんです。
あの大人しかった母のどこに
そんな気力があったのだろうと思ったほど頑張ってました。

忙しいので夕食の後くらいしか母と話す時間がなくて、
私と弟は競って学校のことなんかを話しましたが、そんな時によく母は
金田さんのいたずら話なんかをそれは楽しそうに話してました」。

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「それで今は智子さんはどうしてるのかい?」

思いがけない智子の苦労にやっと言葉が出た荘次だったが、
麻子の顔は悲しそうな表情に変わった。



   

     ……麻子が結婚してから智子は息子と暮らしていたが、
     この春、彼が転勤になったのを機に麻子の家族と
     同居することになったという事だった。

    麻子の夫に気兼ねする智子を説き伏せて、まもなく
    引っ越というある日、信号無視で突っ込んできた車に
    智子ははねられてしまった。


    
    幸い、怪我はたいしたことなかったが、その事故のショックからか
    智子の記憶が一部、特に幼少時があいまいになってしまった…。
    医師によると検査上は異常もないし、多分一過性のものだろうから
    時間がたてば戻るのではないか、という話だった。



    「ただ…」 と医師が付け加えたことは
    「どの程度の時間かは分かりません。すぐかもしれないし、
         結構かかるかもしれない。
    それが長引くようなら若くはないし、あるいはそのままの
    状態になってしまう事も承知しておいてください」



「母の大切な子供時代が忘れられてしまうかもしれない…、
私はどう母に話せばいいのだろうと思いながら
病室に行きました。そこで不安げに窓辺に立ってる母を見て
なんとしてでも記憶が元に戻るようにしてあげたいと思ったのです」

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麻子はしっかりと荘次を見据えて言った。

「金田さん、母に会ってください!」



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次の日曜日、荘次は教えてもらった麻子の家を訪ねた。


何を話せばいいのだろう、オレを見ても分かってくれるのだろうか…




部屋に案内する前に麻子は荘次に一つの約束をしてもらった。
顔を見ても思い出さなかったら、初対面のふりをしてほしいと。

自分は昔の記憶が無くなっているという事実を
あえてまた認めさせて悲しませたくないと。

「分かってます。自分もここに来る途中で同じ事を考えてたから」


そう言いながら、荘次はドアを開けた麻子の後に付いていった。

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                    続く…

    

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                        今日もご訪問ありがとうございます。

先日、申したように今は時間の関係でコメレスはそちらのブログに伺ってます。
その分、「金田さん」をきちんとした形で終わらせるべくせっせと描いてます。
勝手いってすみません。


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コメント

バルおばさんこんばんは。
バルおばさんの文章にはいつもザワッとさせられます。
言葉遣いと絵の相乗効果かなぁ(*^_^*)

長い年月をかけて、二人はどんな再会をするのか。。。
少しドキドキします(^-^)

投稿: lisho | 2007年12月 1日 (土) 01時22分

あ~、ハラハラ・・・・・。

きっと 思い出すんですよね。
そう信じてます、バルおばさん様。

そうしてくださ~い。

投稿: 小夏 | 2007年12月 1日 (土) 01時38分

バルさんったら、必死で読んでるのに、一番
いい所で続くなんて!まるで、韓国ドラマだわ、
ワクイワク、キット!智子さん、一目で解る気がします、
群馬の楽しい時代をキット!思い出しますね、
智子さんの大事な思い出ですもん、
少しだけ、不幸を背負った智子さん、又、子供時代の様に、
素敵なお友達に成りますように、
バルさん、お願いします

投稿: mitirin | 2007年12月 1日 (土) 07時32分

ああ!! 早く次が読みたいです(*^_^*)
でも、焦ってはダメですね
バルさんのご都合の良い時で結構です・・・楽しみにしています。

投稿: ななうさ | 2007年12月 1日 (土) 12時18分

ドラマですねぇ。
金田さん、緊張して1歩を踏み出すんですね。
形はどうあれ、心のハッピーエンドが好きです。
「金田さん、その10」をドキドキしながら待っています。

投稿: ねこおばさん | 2007年12月 1日 (土) 12時43分

こういう展開とは・・・実話のような臨場感と、こういうすプライズの展開が連続ドラマを見ているようで次が早く見たくなります。

投稿: みかん | 2007年12月 1日 (土) 21時54分

 運命のいたずらに どきどきします。

投稿: 水戸小紋 | 2007年12月 1日 (土) 22時45分

あぁ~~!!
こんなドラマがあったのですか?
50年ぶりの再会に、またどんなドラマが待っているんでしょうか。

どうぞ小夏さんが言われるようにきっと思い出す・・・
そうしてくださいね。

投稿: pomodoro0208 | 2007年12月 1日 (土) 22時52分

先の50年は途方もない時間に思えるけれど
過ぎた50年のあっけないことったら。
楽しかった時間 思い出の深い場面は 
すぐそこ ついこの間のような錯覚があります、
きっと二人の再会はきのうの続きのような・・・

ドラマのような人生なんてめったなくて
平凡な人生ばかりと思っていた若い頃の私、
こうして今になってみると
みんな起伏の多い暮らしを重ねてきてるのだなぁーと

次回が待ち遠しいです。

投稿: ふたば | 2007年12月 1日 (土) 23時11分

本当ほんとう。一番いいところで続くなんだもんな~(笑)
でもドラマはそうじゃなくっちゃ!
最近私は金曜夜のドラマの歌姫にちょびっとはまってます。
昔の設定がなんだかいいんだな~。
次の展開も楽しみにしてますよ!

投稿: すう | 2007年12月 1日 (土) 23時43分

 ドキドキします。
こんな形で再会するなんて‥‥
でも これをきっかけに記憶が戻ればいいな。
続き 待ってます。

投稿: がぱちん | 2007年12月 2日 (日) 09時26分

 こんばんは、望です。
 右目に結膜炎を起こしてしばらくパソコンひらけませんでした。少しお久しぶりです。

 (勘助)「おお、殿、いったいどうされたのですか???拙者めと同じ独眼帯をされて・・・」
 (望)「いや、書類の整理中に紙の端で目を傷つけてしまったのじゃ・・・たいしたことはない。しかし我等しばらく休みにしている間、バル殿の話、ずいぶんと動きがあったようじゃのう」
 (勘助)「金田老人の話がここまで動くとは思いもよらぬことでございました。しかしこれから訪れるクライマックス、果たして悲劇になるのか悲劇が拒絶されるのか、まさに戦いの頂のような気分でございますな」
 (望)「そういえばそちの大河ドラマもまもなく最終回じゃのう。ぜひ最終回までにバル殿の話もエンディングを迎えていただかないと、わしらの会話、浮いてしまうのう」
 (勘助)「ご心配されずとも、殿と拙者の会話、このコメント欄ですでに完全に浮いておりまする・・・」 

投稿: 渡辺 | 2007年12月 2日 (日) 20時16分

胸がジンとしなが夢中で読んでます
続きがたのしみ~♪
智子さんの大事な子供時代の思い出と
金田さんを思い出しますよううに~
そう ハッピーエンドが良いですね~♪ (*^。^*)

投稿: ちゃこママ | 2007年12月 2日 (日) 21時01分

なんだか、サスペンスドラマさながらの凄い展開になってきましたぞ!
やはり、美人の智子さんの娘さんの麻子さんもかわいいし、弟くんもキリッとして頭よさそう!!
パリを目指して、がんばれ~~~~て、カブト(とっと失礼)さんも一緒ですか??

投稿: おおかみおばさん | 2007年12月 3日 (月) 00時05分

(*゚ー゚)vこんばんは♪
ここんところ、読むだけ泥棒のピノコです。

w(゚o゚)w オオー!
まさかの展開、そして、思いがけない再会。
ドキドキしながら読みました。
手には、汗がびっしょりです。

その10が楽しみですが、
えらい勢いで更新されているので、びっくりです。
いつでも待っていますので、マイペースで進めてくださいね。

バルおばさん、親子で応援しています。
p(´∇`)q ファイトォ~♪
でも、焦らないでくださいね。

投稿: ピノコ | 2007年12月 3日 (月) 00時22分

なんだか どんどん シリアスな劇的な展開になっていって
どきどきであります☆

金田さんも 智子さんも 今は 独り身で…

もしかしたら、もしかするのかしら。

お二人の 老け加減が上手だなぁ、と感心しております~
(金田さんの青年時代も 見たいなぁ) 

投稿: スノーパンダ | 2007年12月 3日 (月) 01時05分

[バルさん]覚えていますか?
私が腱鞘炎で手が痛いと言っていたとき、貴女は「見た。」もし、良かったら「おもろかった」だけでいいですよ。と、言ってくれてとても嬉しかった。私も状況は違っても同じ気持です。
私のほうへのコメントももし、時間がとれて来て下さったら(あまり遅いと心配します)、「見たよ」でよいですよ。
気持は充分通じますのでね。
 
今、胸を熱くしてドキドキして、読ませて頂きました。
引きずりこまれましたよ。

 


投稿: コスモス | 2007年12月 3日 (月) 20時37分

金田さん役は不器用な感じで、ビートたけしにしようかな。
田中邦衛なんかもどうですか。

投稿: スタンリー | 2007年12月 3日 (月) 20時51分

昔、昔、心を残してきた人の子供さんに巡り会う。
わたしも、巡り会いたいと思いました。

バルさん、お忙しいのにこのような立派な文章を作り上げるのも
とても大変なことでしょう。わたしは読ませていただければ十分です。
ありがとうございます。

投稿: pochi | 2007年12月 3日 (月) 21時49分

こんにちわ、 バルさん
旧名、 梓の小鳥、今、モナカです

またまた良いところでチョン、 と切れてしまいましたぁ。
腕に鳥肌が立ってます。

想い出してぇ、 智子さん!
と握った手に思わず力が入ってしまいましたよ。

投稿: モナカ | 2007年12月 4日 (火) 03時41分

こんにちは~

ブレーメン、じゃない、ハメルーンの笛吹きっぽい お絵かきですが(うふ♪)
実は どうも うちの小学校のことをブログに書くのはよくないようで(ちょっと 他で問題があり) 私の学校の記事 非公開にしました。 

せっかく コメントをいただいたのに ホント ごめんなさいね。  お詫びまいりでした☆

投稿: すのーぱんだ | 2007年12月 5日 (水) 17時27分

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