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2007年12月 6日 (木)

金田さんの初恋、最終回




智ちゃんはオレを見てどこかに置いてきてしまった昔を思い出してくれるのか、
…荘次は胸がつまるような思いで部屋の奥を目で探した。


柔らかい光が差す室内にその人は立っていた。

荘次の心のずっと奥にしまわれていた幼い頃の切ない思い出。

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「…こんにちは」
緊張で少しかすれた声の荘次に彼女は答えた。





「こんにちは…


…どちらの方でしょうか?」




ふうっと肩を落とした荘次の後ろから麻子がさりげなく言った。

「植木職人の金田さんよ。今日は庭の手入れに来てくれたの」



ああ、そうなのと納得した智子に向かい、
かすかにうるんだ目で荘次は「これからも時々伺います。
どうぞ、ご注文があったら言ってください」としか言えなかった。




それからは折にふれ、荘次は智子の家の庭の手入れに行ったが、
記憶が不確かな事に心がふさいであまり外出もせず、
家で小学生の孫娘の相手をしてる智子を見るのはつらかった。


しかしいたずらに心を傷つけない為に
以前の事を話さないように荘次は注意して
智子にとってはただの植木職人のままで見守っていた。

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まもなく冬になり、やがて桜が咲いて、散って、青葉が濃い緑に変わり、
暑い日ざしもいつか秋の気配が感じられるようになり、
荘次がここに来てから1年近くが経っていた。






穏やかな秋の日曜の午後、家の近くの店先においしそうな柿を見つけた荘次は
ふとそれを買って、麻子の家を訪ねた。

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親子の笑顔を見ながら、無口な彼は挨拶もそこそこに帰ろうとしていたが、
孫の笑い声につられて庭先に智子が降りてきたらしいのを背中で感じた。



「はい、おばぁちゃん」と孫から渡された朱色のずっしりと重い柿。



頬に当たる爽やかな秋の風の匂い、
手の平から伝わるこの重さ、冷たさ。
遠い昔に絶対知ってたこの色。






庭先に何か暖かい空気が流れ、少しづつ皆の表情が変わっていき、
麻子はじっと母親の顔を見つめていた。




………、
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ぽたっと涙を落とした智子の目の先には、
かって繰り返し見ていた写真の中の少年、
今はすっかり白髪が増えてまぶしそうにこっちを見ている
懐かしい顔があった。

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                         おしまい…




          жжжжжжжжжжжжжжжжжжжж



    ふう~、50年を一気に駆け抜けました(笑)
    意外と長く引っ張ってしまって、皆さん、すみません!


    これで年末の仕事に向けて頑張れます(本業ですから)。

    ちょこちょこ訪問はしますが、更新は例によってまったり系?です。












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シリーズ物」カテゴリの記事

コメント

美しいお話!
感動的でした~
一章一章毎にときめきを感じながら読ませていただきましたよ、 バルさん。
イラストも素晴らしくて、ご本に出版されるのが楽しみ!

今、 私の目も滲んでます。。。

投稿: モナカ | 2007年12月 6日 (木) 01時05分

(*゚ー゚)vこんばんは♪
寝付けなかったので、来てみました。
更新されていて、びっくりです。

今回も、何度も何度も読み返しました。
特に今回は、いつも以上に大切に読ませていただきました。
心があつくなったのを感じます。
全身が、鳥肌状態です。

金田さんシリーズは、こうして幕を下ろすことになったのですね。
大急ぎで金田さんシリーズを仕上げてくださって、ありがとうございます。<(_ _*)> アリガトォ
これからも、応援しています。
へばっ!寝ますね。

投稿: ピノコ | 2007年12月 6日 (木) 02時20分

おはようございます
はーーっ
朝からうるうるしてしまいました。

さっ私もきっぱりと暮れの忙しさに向かいましょう。
よい一日のスタートになりました、ありがとう 金田さん 智子さん。

投稿: ふたば | 2007年12月 6日 (木) 07時55分

はじめまして、たんぽぽといいます。

金田さんの初恋シリーズ、ずっと読ませてもらってました。
たまたまたどりついた、「バルおばさん、レトロ絵日記」
こんな、素敵なブログがあったんだとびっくりでした。

最終回も、心温まる終り方でよかった~。
これだけのシリーズを仕上げるのは、本当に大変だったと思います。
本当にお疲れ様でした。楽しませていただいてありがとうございます。

私もバルさんと同じ五十路のおばさんです。
これからも、ブログ見せて下さいね。
楽しみにしています。

投稿: たんぽぽ | 2007年12月 6日 (木) 08時37分

智子さんは高峰秀子さん。
麻子さんは藤原陽子さん。または星由里子さん
とキャスティングが決定しました。
だけど子役が未定です。

投稿: スタンリー | 2007年12月 6日 (木) 10時54分

智子さん思い出したのですね、
麻子さんも優しい、お嬢さんですね、何だか?切なくて
嬉しくて、ホット!しました、
柿の思い出が心の隅に住み付いてたのでしょうね、
楽しい物語を
有難う~、久し振りのドキドキしたし、続きを読みたくて、
ウズウズしたわ、
バルさん、ありがとう~。

投稿: mitirin | 2007年12月 6日 (木) 11時33分

胸が熱くなりながら~
ああ~終わってしまったんだぁ~
心暖かい最終章ホッとしながら
チョッピリ終わってしまった淋しさが~
訪問が楽しみだったです
ありがとう♪
娘さんの居られる
おフランスには何時からですか~ (*^。^*)

投稿: ちゃこママ | 2007年12月 6日 (木) 14時15分

こんにちは、バル様。お久しぶりです。
心温まる終わり方で、素敵でした。(*^_^*)
年末になると、本当に気ぜわしいですね!仕事も家庭も...県外の息子も今度は帰ってくるだろうし...
バル様の娘さんは、いかがですか?帰ってこられますか?
結局、主婦は年末もお正月の間は....忙しいとしたものですね!
私にも....まとまったお休みを誰か与えてぇ~!
そんな感じです。(笑い)

投稿: すずまゆ | 2007年12月 6日 (木) 14時26分

わ~~~ん 智子さん思い出したんですね~。
これでわたしも安心して仕事できます(笑)

金田さんのやさしさがじんわりと伝わってくる
とっても暖かいお話をしてくださった
バルおばさんに感謝です。
本業頑張ってくださいませ。

投稿: M | 2007年12月 6日 (木) 15時12分

金田さん 智子さんにたくさん会えて良かった!
最終回!となると 寂しいけれど… ぐすん… びー

大切なところは多くを語らず…いいですねぇ!

今後のしあわせが 糸引き納豆!

投稿: pochi | 2007年12月 6日 (木) 17時28分

パチパチパチ。。。。
ハラハラが ホッとなりました。良かった~。

ありがとう~♪

投稿: 小夏 | 2007年12月 6日 (木) 17時57分

 これから2人で たくさん昔話をするのでしょうね
よかった ほっとしました。
またいいお話を お願いします。

投稿: がぱちん | 2007年12月 6日 (木) 20時20分

金田さんの初恋、本当に心温まるお話でした
最終回は「智子さん、思い出されたんですね」
良かった!・・・ほんとに此方まで嬉しくなりました(^^♪

バルさんのお話が楽しみでしたのに、これで終わりなんて寂しくなります
素敵なお話ありがとうございました。

投稿: ななうさ | 2007年12月 6日 (木) 21時37分

余韻の残る素敵なラストでした。
なんだか涙ぐんでしまいました。
あたたかいお話と挿絵、
本当にどうもありがとうございました!!!
バルおばさん様すごい!

50年の友情かあ。。。 いいなあ。。。

投稿: ひよこ豆 | 2007年12月 6日 (木) 23時34分

やさしくて切なくてステキなお話でした。(;v;)
そんなお話にピッタリな、バル姉さんの柔らかいイラスト!
これが製本されたらステキだろうな(*´∀`人)

お仕事お忙しいのに、ステキなお話をありがとうございました!
また、一段落したら「シリーズ物」読みたいです♪

投稿: 大豆 | 2007年12月 7日 (金) 13時29分

ラストの表現がとても素敵。
文書も、イラストも…。
想いはいつか通じるもの、よかったね荘次君、智子さん。
私も幸せな気分に包まれています。

投稿: ねこおばさん | 2007年12月 7日 (金) 16時50分

バルさん、こんばんは♪
ふぅ〜、この何日間かどーなるの〜?と密かに
ハラハラしてたのですが、読み応えあるシリーズでした。
最後はほんわか温かな気持ちになって終われて良かった〜
何だか自分の身近な人と顔がダブってしまいました。
イラストも良かった!!

ありがとうございました。

投稿: kohaku | 2007年12月 7日 (金) 17時08分

バルおばさん

年末にふさわしい 大作 お疲れ様でした~

思い出したところで 終わる…

綺麗な幕引きですね~~

見守る金田さん、良かったです~

なぜか 私の頭には「冬ソナ」がずっと 浮かんでましたが…

初恋ってのは 忘れられないものですね~

投稿: スノーパンダ | 2007年12月 7日 (金) 20時24分

やー。完結完結。
本当にすてきな物語をどうもありがとうー。
何十年もの時をへて気持ちを通い合わせることができてひと安心^-^
バルおばさんは子供さんが小さい頃はこうしていろんなお話を
語ってあげていたのかな~。

投稿: すう | 2007年12月 7日 (金) 21時49分

余韻が残り、ほのぼのした気持ちになりました。
心地よく、読み終わりました。ありがとうございました。

投稿: みかん | 2007年12月 7日 (金) 22時20分

>智子にとってはただの植木職人のままで見守っていた。

なんだか感情がこみあげる一節でした。
柿が記憶を思い起こさせた・・・・。

最終回まで書いてくれてありがとうございました。
本業、師走の慌ただしさに風邪ひくことの無いよう頑張ってください!

投稿: lisho | 2007年12月 7日 (金) 22時30分

想い出してよかった。
「こんにちは・・・・どちらの方でした?・・」あぁ~、ダメだったんだぁ~っていや絶対想い出してくれる・・・。

忙しい中バルさんありがとう。最近年取ったせいか、涙もろくなったみたいです。

身体に気をつけて、年末まで頑張ってね。

投稿: pomodoro0208 | 2007年12月 8日 (土) 00時35分

 こんにちは、望です
 
 (望)「勘助、バル殿の話が最終回だそうな。是非そなたが使者になって祝辞を申して参れ」
 (勘助)「ううう・・・拙者も泣きながら読み終わったところでござる。大河ドラマが終わってからの祝辞の出向きになりますので、もしかしたら年末になってしまうかもしれませぬ。しかしバル殿のブログによると、年末はバル殿、コブ子殿に会われるためにフランスにいかれるとか・・・」
 (望)「ならばそなたもフランスにまいるのじゃ・・・バル殿のファンでも、海外まで追いかけていく人間は我等をおいておるまいて」
 (勘助)「相変わらず人使いの荒い殿でござるのう。何はともあれ、バル殿、これからもよろしくでございまする」

投稿: 渡辺 | 2007年12月 8日 (土) 15時48分

余韻が残る終わりかた!!さすがバル師匠!!
これで、心置きなくあの世へ・・ではなくパリに行けますね!!
かきでも食べるかな!!

投稿: おおかみおばさん | 2007年12月 8日 (土) 20時33分

バルおばさんたらっ、泣かせちゃいけませんよ~(笑)最終回、最近涙腺の緩んでいる私は本当に泣いてしまいました。

さてさて、泣かせて頂いた御礼として、架空映画化の企てですが、次のような大綱で如何でしょうか?(汗)

原作。バルおばさん
脚色。(甚だ厚かましいですが)アスカパパ
監督。小栗康平(もちろん、バルおばさんが肩入れされているこの方以外には考えられません)
撮影。安藤庄平(『泥の河』で、小栗康平監督と息が合って居られる筈ですので)
音楽。群馬交響楽団(『ここに泉あり』でも有名な群馬の楽団ですよね)
と、此処まではすいすいと行ったのですが、配役です。これは原作者の意向に添わねばなりません。
ということで、バルおばさんのご決定にお任せします。
私の参考意見ということで、荘次役は志村喬さん辺りがピタリだと思います。が、故人ですので、、。
智子役は・・これは候補者が多いですね。私の好みでは、原節子さんですけど、、。バルおばさんに一任で~す。(笑)

投稿: アスカパパ | 2007年12月 8日 (土) 21時54分

バルさん、こんばんは。
 そしてお疲れ様でした。
考えて無い頭で考えて、やはり遅まきにコメントしました。
 沢山の方がコメントされていますし、皆さんの内容は殆ど同じですね。
私もそう変りません。唯、「とても感動しました」この一言が言いたくて。そうそう、ラストの表現「絵と文章」が特に素敵でした。
 私のブログへのコメントは不要です。いつか、落ち着かれたら、以前のようにコメント交換をしましょね。

投稿: コスモス | 2007年12月 9日 (日) 18時17分

パチパチパチ☆イラスト小説良かったです〜!
他のも読んでみたいのでまた時間がある時に是非描(書)いて下さい!

投稿: pino | 2007年12月 9日 (日) 23時11分

私の パソコンに不具合があって、しばらく拝見できませんでした。
その間に、素晴らしい展開をしていましたね。驚きました。
読後感のいい作品。やはりこうあってほしいもの。すばらしい!!!。

投稿: ミッチーおばさん | 2007年12月11日 (火) 18時06分

パルおばさん~
ご無沙汰です。11月からやっぱり忙しくなってpcすら開けない日々がつづきました。其の間に金田さん終わりましたねー
一気に読みました。心温まるやさしい物語でしたね。
お仕事も大変でしょうが、年末にはマドマーゼルがいるところにお出かけとか羨ましい限りです。
うちは関東に住んでいる息子夫婦が孫たちと2組来るんです。楽しみでもあり、大変でもあるお正月になりそうです。

投稿: evecooky | 2007年12月13日 (木) 11時38分

 ああ、良かった。これで年末が むかえられます。無理しないでね。

投稿: 水戸小紋 | 2007年12月14日 (金) 09時08分

おはよう~、次の物語、楽しみです、
待っていま~~す

投稿: mitirin | 2007年12月15日 (土) 09時58分

これはすごい!!カラーイラストつきの小説ですか…
素晴らしいです。内容も面白いですし。

投稿: ユナイテッドアローズ | 2007年12月19日 (水) 21時31分

バルおばさん こんばんは ご無沙汰しております。おばさんの小説をまた,見せていただきました。良くストーリが出来ますね。構想が前からあり一気に噴出したものですか。私には書けませんので羨ましいです。これからも頑張ってください。大人のブログが1月中ごろで閉鎖されますので寂しくなります。

投稿: kenken | 2007年12月19日 (水) 22時43分

とても素敵なお話ですね。
感動しました。

投稿: oven | 2007年12月22日 (土) 15時09分

迷い込んでここへ辿り着きました。
軽い気持ちで読んでいたんですがすごくはまっちゃいました^^
とてもやさしさが伝わる絵で感動しちゃいました。
最終回から読んでしまって、順番は間違ってますが・・・これからゆっくり拝見させていただきます^^

投稿: 聡子@アトピー化粧品探しの旅 | 2007年12月23日 (日) 21時31分

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