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2007年11月24日 (土)

金田さん、その6




荘次親子が智子の家の玄関に着いた時、
ちょうど帰宅して事情を聞いた父親が母親に怒っているのが
閉め忘れた引き戸から聞こえてきた。




「だから、僕が前から言っておいただろう?
ああいう躾も出来てない子と遊ばせるんじゃぁないと。

それにあの子は宿題なんかしょっちゅう忘れているそうじゃないか。
智子もあと1年もすれば中学生だ、友達は選ぶべきだよ」



でも、たいした怪我じゃないし、第一智子が悪いのだから、と言う母親に

「以前の智子だったら、そんな無茶はしなかった筈だ。
いいかい?朱に交われば赤くなるのだよ」





荘次の母の洋子は外でじっと聞いていたが、すうっと一息吸うと
玄関の戸を開けた。
荘次の胸は激しく動悸を打って、どうやっていいのかさえ分からず、
ただ黙って母のそばに立っていた。

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深々と腰を折って謝る母の先にやはり自分のせいで大変な事になり、
とまどっている智子がいた。

「荘ちゃん、私…」 何か言おうとしたが、言葉が見つからず
涙ぐんでる智子を見るのはいたたまれなかった。


重い雰囲気を後にして荘次親子はますます強くなった北風に
逆らうように歩いていた。



「荘次…」
ぽつりと洋子が言った。

「あの人達を怒っちゃいけないよ、
誰でも子供が怪我をさせられれば感情的になるもんさ」

北風の中で強く息子の手を握りしめ歩いていく母に

「分かってるよ、なんともないよ」と荘次は答えた。

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しかしいつも働きずめで冷たい母の手が、
つないでる荘次にもその熱が伝わるほど燃えるように熱く、
前を見てるその横顔にもざわざわとした思いがみえるようで
荘次は母を悲しませてしまった後悔でただただ黙って
まだ母を風から守るには小さかったが前を歩いていった。


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シリーズ物」カテゴリの記事

コメント

子供のころ、家庭の問題で、夜の寒空を母と二人で、とぼとぼ歩いたという経験があります。
そういうことは、みんな何かしらあるかもしれませんね。

投稿: スタンリー | 2007年11月24日 (土) 08時19分

荘次クンも、 お母さんも偉いですね。

荘次クンの方は娘に、 私はお母さんを見習わなくてはいけません。

若し私が荘次クンの母だったら謝罪に、 というより弁解に行ってたかも知れませんもの・・
そしてこういう母を見て育った娘は・・・!

教えられました、 改めて。

美しいお話でじ~んとして来ましたよ。

投稿: 梓の小鳥 | 2007年11月24日 (土) 09時57分

素晴らしいです!!
二組みの親子の愛情が対比されて、交錯するところが。
教訓まで含まれていて、、。
バルおばさんは、セミプロ級です。私はアマチュア級だと分かりました。これ以上は恥ずかしくて私の過去の小説には触れません。(大汗)
今後の展開を固唾を飲んで拝読するのみです。

投稿: アスカパパ | 2007年11月24日 (土) 10時06分

う~ん

バルおばさんは イラストだけでなく 文章も綺麗で 上手ですね~

玄関や 木々も丁寧で さすが…なのです。。。

(ちょっと、私も 連載を描きたくなっちゃったなぁ♪)

投稿: スノーパンダ | 2007年11月24日 (土) 11時26分

荘次君の顔が、しおらしくてウルウル来ますよ、
文章も素敵だし構成の素晴らしいですね、泣かしませた
お母さんの冷たい手を握った、荘次クン、反省ですけど、悪い事
してないのに、辛い男の哀愁を感じるよ、少しオオバーかな?
手を怪我した子を見ると、両親の怒る気持も解るし
複雑だわ、何だか?こんな事件身近に有ったのに、、思い出せないわ、
子供って私の時代は怪我なんて!毎度だったわ

投稿: mitirin | 2007年11月24日 (土) 12時00分

 なんだか 胸がつまります
子供が何を見てるのか 何を感じるのか
難しいですね
子供を育てるのは
自分も子供と一緒に成長中です。
荘次くん応援してるよ!!

投稿: がぱちん | 2007年11月24日 (土) 12時21分

金田さんの物語は本当に考えさせられる話ですね
二つの家族の考え方の違い、立場の違いなど・・・
バルさんの話の展開の上手さに感心いたしました。

投稿: ななうさ | 2007年11月24日 (土) 18時29分

荘次くんは小さいけど男だねぇ!
いまどきはいないよ、日本から絶滅しつつある男気があるよ。
先々は1冊の本にせんばね。
なくなりつつある日本人の心をいまどきの子に教えるためにね。

投稿: ねこおばさん | 2007年11月24日 (土) 18時46分

なんだか切ないですね。
どっちも子供を思う気持ちは変わらないんだろうケド
貧乏度ぐあいとかで人をさげすむような親にはなりたくないですねぇ。
でもそんな時代だったのかな。
親に悲しい思いをさせて悲しむ子供。
それはかわらず今もあり続けてほしいですね。

投稿: すう | 2007年11月24日 (土) 19時15分

人の表情が とっても リアルに表現されてて、イラストが ホントにプロのようです。 
お父さんも 子供を思う気持ちでいっぱいでの態度。わかりますね。

お話 読んでいたら、この頃の子供の虐待事件 親がわが子を思う気持ち どこに行ったんでしょうね~、と悲しくなりますよ。

バルさん、この結末は ハッピーでお願いしますね^^

投稿: 小夏 | 2007年11月24日 (土) 19時25分

二組の親の愛情がそれぞれ解って切ないですね~

でも、より荘次くんと母の気持ちになってしまって
お詫びの気持ちと口には出せない悔しさ…
なんかジンときます
二人に頑張れ~
エールを送りたくなります
ねこさんと同じで思いです
これは1冊の本になりそうですよ (*^。^*)

投稿: ちゃこママ | 2007年11月24日 (土) 21時50分

バルおばさんの作品は人をひきつける強い魅力がありますね。
特別の筋書きではないのになぜでしょう。人の心の奥底を深く
知るバルおばさんだからなんでしょうね。父親の、二人の
母親の気持もそれなりに理解できるように書かれています。
公平な見方ができるバルおばさんはステキ!私もできたら
ハッピーエンドにして欲しいけど・・・。

投稿: ミッチーおばさん | 2007年11月24日 (土) 22時48分

う~ん・・・思わず唸りたくなります。
なかなか考えさせられる物語です。
智子のお父さんの顔なんかうまいですね~。

それに荘次の母洋子の凛々しい顔すてきですね。
次回が楽しみだです。

投稿: pomodoro0208 | 2007年11月24日 (土) 23時08分

こみあげるものがありました

焚き火の告げ口をして失敗したとき、学校の先生に「気をつけましょうね」といわれた私。
そのことを母に告げたら、母が黙ってこぶしを握り締めていたことを思い出しました。

投稿: pochi | 2007年11月25日 (日) 10時48分

バルさん、こんばんは。
 びっくりです。連続upされている?
ゆっくり拝見しました。心を切なくして。

 二組の親の愛情がそれぞれ解って切ないです。
私もどちらかと言えば、荘次くんの母親の気持ちになっています。
お詫びの気持ちと口には出せない悔しさ。
これは私にも有ります。何だか他人事と思えなくて(-_-;)

二人に心から「頑張って」を送ります。
私も本にされたらと思いながら・・・・。

これから次の記事に参ります(^_-)-☆

投稿: コスモス | 2007年11月26日 (月) 20時08分

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